山形ビエンナーレ2018 「ゆらぎのレシピ」冊子作品詳細

山形ビエンナーレ2018「ゆらぎのレシピ」で制作した作品の冊子部分詳細です。写真とテキストを両面に印刷し、それぞれを束にして展示し、一枚一枚台紙に挟んで持ち帰ることができるようにしました。印刷物は、紙のサイズや厚み、マットやツヤなど質感もそれぞれ変えて制作しました。

※展示の詳細は「山形ビエンナーレ2018「ゆらぎのレシピ」作品制作・展示」をご覧ください。

 

以下、台紙に書いた序文です。

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山形新幹線の終着駅、新庄駅からさらに車でずんずんと森の中へ進んだところに真室川町はあります。

最上地方の最北に位置するこの土地に定期的に通い、「森の家」の佐藤さんの案内のもと、深い自然の中で淡々と脈々と営まれてきた、土地に生きる食の姿を1年と少しの間巡りました。

 

プロジェクトが始まる前、このリサーチをどのような形に残せるだろうかと、東京で抱いていた食に対する想いと共に、あれやこれたコンセプトを練りました。

しかし実際に足を踏み入れてみると、圧倒的な自然を前に、ただそこに立っているだけで精一杯。

頭で考えていたあれこれは急に意味がなく思えてきたのです。

 

まっさらな身体でその場に立ったとき、何を感じ何を掬い取れるか。まずはそこから始めようと思いました。

 

東京から新幹線に乗り、深い深い森の中に入って行くにつれ、ひとつひとつ余計なものを捨てていく。毎回、唯一できる準備はそれだけでした。

濃密な時間を経て、東京へ帰る新幹線の中はいつも、心地よい疲労感と抑えきれない高揚感で満ち満ちていました。

東京と山形を行ったり来たりしながら、毎回ぐらぐらと大いに揺さぶられては、くたくたになり、それを繰り返せる日々は、何だかとても嬉しかった。

 

生きている私たちが、生きている命をその手でとり、手を使って料理し、食べるということ。

そのまわりにあるもの、想い、風景。

それらを追いながら、私自身が味わった、私自身の価値観、身体感覚の「ゆらぎ」を毎回その場で一皿という形に料理し、記録し、形に残しました。

写真を観て、テキストを読んで、映像や音に身体を浸して、また、展示物を匂ったり、触ったり、していただきながら、真室川の様々な季節に想いを馳せ、味わっていただければと思います。

 

私の体験した「ゆらぎ」の味が、新たな波紋となって、みなさまの身体を揺らすきっかけになれたらと願いつつ。

 

 

 

website: https://biennale.tuad.ac.jp/2018/

主催:東北芸術工科大学(みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2018)

写真・映像:志鎌康平

キュレーション・編集:宮本武典

食材コーディネート:森の家/グラフィック:梅木駿佑(UMEKI DESIGN STUDIO)/什器制作・展示協力: TIMBER COURT/動画編集:後藤ノブ(akaoni)/協力:高橋伸一、阿部衣利子、三浦友加、小野寺奈央

助成:平成29年度文化庁 大学を活用した文化芸術推進事業(市プロジェクト2017)

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写真:根岸功(冊子作品記録)